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トールエクスプレスジャパン

「歩合給(出来高)」から「残業代相当額」を差し引く 裁判の結果は?

2021-03-15

経費の大半が人件費であるサービス業や輸送・運輸業。

経営者からすれば、この人件費を抑える事が目下の命題となります。
ところが、マンパワーと比例して売り上げや利益がが増える業態事業は、人件費を
簡単に削減する事ができません。

そこで、「歩合給(出来高)」から「残業代相当額を差し引く」との考え方を採用
していた会社あります。

つまり、高い歩合を獲得するために残業したのだから、両方を支払えば会社は二重
払いになるではないか。したがって会社はその差額だけを労働者に支払う、との考え
方を賃金規定に盛り込んだんわけです。

これが労使間の紛争となり裁判となっているのですが、弁護士ドットコムニュースが
丁寧に解説していましたので、ご紹介します。

 

—— 弁護士ドットコムニュース記事の要約 ——

一般旅客自動車運送事業等を営む株式会社である国際自動車、俗に「国際自動車
事件」と呼ばれる裁判で、最高裁は会社側を違法と判断し、今年2月までに労使の
和解が成立しました。

ところが2021年2月25日、ある運送会社で用いられていた同種の仕組みについて、
先ほど大阪高裁がこの判例を引用したうえで、控除(残業代相当額を差し引く)を合法
とする判決を出しました。

これに対して労働者側が3月10日付で上告しており、最高裁で「判例の射程」が審理
されることになります。

問題になっているのは、日本郵政グループの物流会社「トールエクスプレスジャパン」
(大阪市)の賃金体系です。

トール社では、時間的効率向上を考慮するとして「能率手当」を導入。
業務量に応じて算出される金額(出来高)が通常の残業代(残業代)よりも多い
ときに、出来高と残業代の差額が支払われます。

国際自動車が採用していた賃金の計算方法と異なる部分もありますが、出来高から
残業代相当額が控除される点では共通しています。

この仕組みが、残業代について定めた労働基準法37条に違反するとして、労働者ら
13人がそれぞれ約75万~220万円を求めています。

大阪地裁は2019年3月、賃金体系の設計は法令による規制や公序良俗に反しない
限り、基本的に労使の自治に委ねられるなどとして、制度を合法としました。

実は、国際自動車事件の下級審判決でも、同じロジックで労働者敗訴とした
ものがありました。
大阪地裁判決はこの判例に則した判決だったと言えます。

しかし、国際自動車の裁判は最高裁で勝敗が逆転。
(大阪地裁判決は、この最高裁判決の前)

判断に当たっては名目だけでなく、賃金体系全体における位置付けなどにも留意
すべきなどと判示されました。
そのうえで、最高裁は残業代の額がそのまま出来高から引かれるのは、その売上を
得るためにかかった必要経費(≒残業代)をすべて労働者に負担させるようなもの
だとして、「労基法37条の趣旨に沿うものとはいい難い」などと判断しています。

トール社の控訴審では、この最高裁判決を踏まえて、労使双方の主張が展開される
ことになるでしょう。

 

●国際自動車事件との違いは?

今回の高裁判決で、トール社裁判の裁判長も、最高裁判決を引用しながら、
トール社の賃金制度を「名目だけではない」形で検討しています。
たとえば、業務に習熟すれば、業務時間を一定程度短縮できることや、過半数組合との
合意があることなどをあげ、残業代の支払いを免れるための制度とは認められないと
判断しています。

このほか、

国際自動車と違い、残業代が増えて能率給がゼロになったとき、出来高部分についての
残業代が発生しない設計なので、残業代とその基礎となる部分とを区分でき、残業の
対価といえること。

固定給や残業代が賃金の6割程度を占めており、出来高払制の保障給を定めた労基法
27条などに違反しないことなど。

などをあげて、トール社の仕組みは合法としました。

残業が増えても、控除により賃金総額が変わらないことについては、固定残業代を
例に、それだけで違法とは言えないなどともしています。

 

●労働者側「労基法37条の趣旨に沿った判断ではない」と上告

一方、労働者側は、最高裁判決が示した、労基法37条の趣旨(長時間労働の抑制や
労働者への補償)に沿った判断がされていないと批判しています。

結局のところ、労基法27条などの明文規定に反しない限りは自由ということであれば、
最高裁でくつがえった国際自動車事件の下級審判決と同じではないのかという指摘
です。

昨今、「労働時間ではなく成果で評価すべき」というテーマをめぐり、労使の間で
激しい議論が繰り広げられています。

トール社の仕組みについて最高裁がどう判断するのか。
人を雇用する立場にある経営者の皆様には、きっと気になるところだと思います。

Category:コンプライアンス関連,ブログ,賃金関連,雇用関連

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