
生産性ツールで生産性は本当に上がるのか?
2021-03-18
「生産性」と言う言葉は、事業体内部だけでなく、国会でも「日本の生産性はOECD諸国と
比較すると低い」などの議論がなされており、皆様はすでにご存じのワードだと思います。
また、助成金も、生産性向上の要件が満たされた場合、多額の追加増額がされるものが
増えています。
この生産性について、「最大限に高めるには何が必要なのか」としてビジネス+ITが
ユニークな記事を掲載していたのでご紹介します。
—— ビジネス+IT の記事の要約 ——
生産性ハック情報の発信源である欧米では今、生産性ツールへの過度の依存が生産性を
低下させるのではないかという問題が提起され、生産性ツールに向き合う姿勢を再考
しようという動きが起こっている。
生産性を最大限に高めるには何が必要なのか。そのヒントを探ってみたい。
生産性とは、投入する労働量に対して産出される付加価値のこと。
生産性を高めるには、大きく2通りある。
・投入する労働力や時間を少なくしつつ、同じ量の付加価値を維持すること。
・同じ労働量で、多くの付加価値を生み出すこと。
この状況は世界共通だが、生産性ハック(工夫や取り組み)情報のほとんどが欧米発であり、
日本よりその歴史は長い。
英語圏のビジネスパーソンの間で、どのような生産性ハックが流行っているのかを見れば、
最新の生産性ハック情報を知ることができる。
そんな欧米では、生産性ハックに関して最近面白い視点が提唱され、物議を醸している。
『生産性ツールを使うことが本当に生産性を高めているのか?』
英大手メディアのBBCは2021年2月10日に「Why relying on productivity tools can backfire
(生産性ツール依存が危ない理由)」と題した記事で、生産性への執着や生産性ツールへの
依存によって、生産性が損なわれ、燃え尽き症候群などメンタルリスクが高まる可能性を
指摘している。
このほかにも、生産性ツールへの過度な依存が生産性を下げる可能性を指摘する論者は
少なくない。
経験的に、生産性ツールを活用することで作業効率が上がったと感じることは多々ある。
しかし、ツールが多すぎたり、ツールの使い方を間違えると生産性は下がるリスクを
内包している。
米メディアTechRepublicが2018年12月、ツール利用に関する興味深い調査レポートを
紹介している。
この調査は、Pegasystems社がデスクワーク労働者の500万時間を分析し、一般的な
労働者が1日にどれほどのツール(ソフトやアプリ)を使っているのか、またどれくらいの
頻度で各ツール間を移動しているのかを明らかにしたものだ。
同調査によると、1日平均35個のツールを使い、各ツール間を1,100回も移動している
ことが判明。
この間、コピー・アンド・ペーストの回数は134回、キーボードの打ち間違いは845回に
上った。また、6分ごとにEメールを確認しており、Eメール確認時間は1日のうち13%を
占めていることが明らかになった。 結果、付加価値を生み出す作業の割合は23%に
とどまるものだった。
35個のツールを使っているということは、マルチタスク(複数作業を同時遂行)状態に
あるということ。
マルチタスクが生産性を下げる可能性を指摘する研究は枚挙にいとまがない。
たとえば、ミシガン大学の研究は、タスク間を移動する度に、脳は毎回ゴール設定と
業務ルールを
書き換える必要があり、それには多大な時間コストが必要であると指摘。
またスタンフォード大学の研究では、マルチタスクに従事する人は、シングルタスク
(単一作業)を好む人に比べ集中力が短いことが示唆され、サセックス大学の研究では
マルチタスクが脳機能を低下させる可能性が指摘されている。
各研究から明らかなのは、生産性を高めるには、マルチタスクを避け、シングル
タスクに集中できる環境を作ることが重要ということだ。
しかし、生産性向上に向け日本で実施されている「働き方改革」では、マルチタスクの
根本的な解決につながるような取り組みは少ない印象。
たとえば、人材会社エン転職が2018年に実施した「働き方の改革」に関する調査では、
働き方改革の一環で実施されている取り組みで最も多いものとして、「ノー残業、
残業禁止」が挙げられている。
残業を禁止したところで、マルチタスクの状態が続くのであれば、生産性を改善する
のは難しい。
このほか「有給休暇の促進」「業務プロセス改善ツールの導入」など、シングル
タスク実現とは関係のない取り組みが多いことも明らかになっている。
実際、同調査では働き方改革後に、自分の働き方が変わったと回答したのは全体の
22%のみ。大半が働き方は変わっていないと回答している。
では、シングルタスクをどう実現するのか。
マルチタスクになってしまう理由としては、仕事量が多い、会議・Eメール・
チャットが多い、職場環境が悪いなどが考えられる。
こうした課題に対し、シングルタスクにまつわるハーバード大、スタンフォード大学、
MITなどの研究成果をまとめた書籍『SINGLE TASK』によると、まず個人として
すべきことは、一点集中を行うための時間管理だ。
たとえば、あるタスクをこなしている際、同僚からのテキストメッセージやふとした
考えごとをきっかけに別のタスクが生じてしまった際、それをいったん、脇に置いておく。
そのために、タスクに向かう前にあらかじめメモ帳などを用意しておき、目前の
タスクとは関係のない事象が発生したら、それを逐一書き留めていくなどして、仕事の
適切な優先順位づけを徹底すると良いとされています。
それと同時に、そうした個人をマネジメントする管理職には、仕事量の最適配分、無駄な
会議やEメールの廃止、オフィス内のデスク配置変更などが求められる。
このように、組織と個人が、今回述べたような生産性ツールの過剰な利用やマルチタスク
の弊害を認識し、働き方について双方ですり合わせを行うこと、またそれを可能にする
土壌としての組織文化を形成することが、真の生産性向上と働き方改革につながる。
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記事では、労働者の業務や作業を複数化させず単一化させる事で生産性が向上するのでは
ないかと問いかけています。
これは何も労働者の作業だけでは無く、会社が取り扱う商品やサービスでも同じことが
言えると思います。
特に中小・零細・個人企業は専門性を高めるために、資産と時間を集中投下しなければ、
大手には勝てないと、私は考えます。