
突然の契約変更 休業手当の支払い回避狙い?
2021-03-22
「コロナウイルス禍の中で、直接雇用から業務委託に契約変更され、休業手当や国の支援金を
もらえなくなりました」
福岡市南区の日本語学校の非常勤講師から、西日本新聞「あなたの特命取材班」に訴えが届いた。
2020年9月、学校側から「4月にさかのぼって業務委託へ変更する」と詳しい説明なく契約書を渡され、
サインしてしまったという。専門家は、休業手当の支払いを回避する学校側の狙いがあるとみている。
この講師によると、インターネットで求人を見つけ、ハローワーク経由で19年度に学校と非常勤の
雇用契約を結んだ。
90分1こま、留学生に日本語を教えた授業数に応じ賃金が決まる。
契約書に明記された雇用期間は「20年3月末まで」で非常勤講師は10人以上いた。
コロナの感染拡大で、同年3月ごろから授業がなくなり「自宅待機」になった。
対面授業の再開は7月に入ってから。
4月以降も、非常勤の雇用契約が維持されていると認識していた。
少しずつ授業数が増えた7、8月分の給与は通常通り支払われた。
ところが9月上旬、突然、雇用関係がない「業務委託契約書」にサインするよう求められた。
「非常勤講師の机にやって来て、そこにいた講師から流れ作業のようにサインを取っていった。
私も署名してしまった」
事前説明はなかったと振り返る。
業務委託への契約変更が、4月にさかのぼる内容と知ったのは後のことだった。
会社の都合で労働者を休ませた場合、会社側は休業手当の支払い義務が生じるが、業務委託契約を
結んでしまうと対象から外れる。
福岡労働局によると、今回の場合、講師の仕事に専門性があり、学校側から細かい指示を日々受け
ずに授業だけをこなしている点を踏まえ、業務委託の形式でも違法性はないとする。
ただ、多くの労働相談を引き受ける連合福岡ユニオン(福岡市)の寺山早苗書記長は「4月にさかの
ぼって業務委託とすることで、休業手当の支払い責任が消滅し、学校側の負担は軽減される。
休校が多くなるコロナ禍で、学校にとって経営メリットが大きいと判断したのではないか」と指摘する。
業務委託に変更した理由などについて、学校側は取材に「答える必要はない」と回答している。
契約変更で、講師はさらに痛手を負った。休業手当をもらえていない労働者を対象とする国の「感染症
対応休業支援金・給付金」も対象外になったのだ。
休業前平均賃金の80%を支給するもので、20年10月に申請した。
ところが「休業している事業主に雇用されている労働者ではない」と、業務委託契約を理由に不支給と
された。
講師は訴訟も考えたが費用などで難しい状況。
「教育機関の対応とは思えなかった。コロナで困っている留学生も多いのに、しっかりとした対応が
できるのか」と嘆く。
講師は訴える「労働者にとって不利な契約変更を、いつの間にか押し付けられないよう注意してほしい」
[ 西日本新聞 からの引用 ]
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