
給与のデジタル払いの「メリット」と「デメリット」
2021-04-01
読売新聞社の「大手小町」に給与のデジタル払いについての記事が掲載されていました。
偽札が極めて少ない事から、日本の紙幣(硬貨)に対する信用は深く、消費者も紙幣を好んで使用する傾向にあります。
ところが近年、この常識が覆るかもしれません。
というのも、スマートフォンの決済アプリなどで給与が受け取れる可能性が高くなってきたからです。
—— 大手小町の記事の要約 ——
給与のデジタル払いは、厚生労働省の審議会で論議が進められており、政府が近々解禁するものとして話題になっています。
ソフトバンクは先日、解禁を見据えて、キャッシュレス決済「PayPay(ペイペイ)」を使って、社員に10万円の特別手当を支給しました。
デジタル払いが解禁されれば、企業は、従業員の給与を銀行口座を介さず、資金移動業者として登録しているPayPayや楽天ペイなどのスマホ決済アプリなどに振り込めるようになります。
給与を受け取る側としても、これまでは「給与を受け取るのは銀行口座」が常識でしたが、選択の幅が広がりそうです。
そもそも、給与の支払いについては、労働基準法24条で「賃金は、通貨で直接労働者にその全額を支払わなければならない」と規定されています。
法律をもう少し細かくみてみると、「(1)通貨」で「(2)直接」、「(3)全額」を「(4)毎月1回以上」、「(5)一定期日に」支払うこととされていて、これを「賃金支払いの5原則」といいます。
政府は現在、給与をデジタル払いにできるようにするほか、支払い頻度なども柔軟に決められるよう検討しています。
銀行口座を介さずにスマホ決済アプリなどに直接給与が振り込まれれば、銀行口座やクレジットカードなどからチャージする手間が省けます。
また、普段使いのスマホ決済アプリに給与が入金されれば、買い物もスムーズ。買い物をするたびにポイントもたまって、さらにお得。
一方で、もしも給与の全額をスマホ決済アプリで受け取るとなると、クレジットカードの利用代金や公共料金、家賃など、銀行口座から引き落とされる費用の支払いに困ります。
また、給料日に銀行口座から積立定期預金をしている場合などには、計画的に貯蓄ができなくなる可能性もあります。
そのため、デジタル払いでは、スマホ決済アプリで買い物をする代金分など、給与の一部を受け取る形で利用するのが現実的かもしれません。
実際、デジタル払いが解禁になっても、原則として銀行口座への振り込みとデジタル払いを併用することになる見込みです。
例えば、25万円の給与のうち、20万円は銀行口座に、5万円は決済アプリに振り込んでもらうというイメージです。
給与のデジタル払いには、他にも注意すべき点があります。
一番懸念されるのが、自分が使用しているスマホ決済などの資金移動業者が経営破綻してしまった場合です。
例えば、銀行や他の金融機関が経営破綻した場合には、「預金保険制度」が適用になり、「預金口座の元本1000万円」まで保護されます。
金融機関は、そのために保険料を負担し、厳しい自己資本規制も課されています。
一方、スマホ決済などの資金移動業者は、利用者の資金の全額を供託などで保全する必要がありますが、取扱額が日々変動していることから、タイムラグが生じ、経営破綻時には保全額が十分ではないこともあり得ます。
仮に払い戻せる場合でも、返金までに半年程度かかるとされています。
また、電子マネーを狙った不正や犯罪も懸念されます。記憶に新しいのが、NTTドコモの「ドコモ口座」を巡る不正引き出し事件です。
ハッキングなどによる資金の不正流出やセキュリティーの不備による不正送金をどう防ぐかも課題でしょう。加えて、アカウントが乗っ取られてしまった場合の補償についても、早急に整備を進める必要があります。
いずれにせよ、今後、デジタル化の流れは加速することでしょう。給与のデジタル払いについても、注意点やデメリットもよく理解したうえで、生活の中に上手に取り込んでいきたいものです。
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給与がデジタル払いになる事は良いのですが、それをそのまま(全額)お財布代わりにしておく事は危険です。
たとえば、レジがQRコードを読み込んで決済するタイプ。
お店での支払いは電気が届いていてレジが動いているから可能なのであって、停電になれば支払いは出来なくなります。
日本は災害の多い国。たとえ給与がデジタル払いになってもある程度の現金は必ず手元に置いておく備えが必要だと思います。
(もちろん災害時の事を考えれば、全額銀行に預けておくのも考えもの)
「便利な仕組み」は、問題無く動いているから便利であって、ひとたびトラブルや事故が発生すれば、とんでもなく不便な代物に変わります。
たとえば私の電動自転車。
バッテリーが切れれば、突然 鉛の塊に豹変します。 何事も日頃のメンテナンスと事前の準備が大切なんですよね。