
1ヶ月単位の変形労働時間制のメリットとデメリット
2022-02-10
使用者が労働させる事ができる時間は1日8時間、1週間40時間と労働基準法にて定められています。◆管理者なら知らんとアカン・雇用のルール◆ [第1回 労働時間・休憩時間の巻]
この枠組みを弾力的に扱う事が出来るのが変形労働時間制です。予め取り決めておくことにより、「特定期間」において平均して1週間の労働時間が40時間であれば、その特定期間内の一部では1日8時間、1週間40時間以上の労働が可能になるという制度です。メリット部分で図解致します。
平均する「特定期間」には
- 1年単位
- 1ヶ月単位
- 1週間単位(非定型変形制、対象事業所に制限有り等上記2つとはやや異なります)
の3タイプが存在します。
今回は1ヶ月単位での変形労働時間制の解説していきます。
メリット
第1週が閑散期、第2、3週は通常通り、第4週が繁忙期となる事業所を想定した場合、下図のように所定労働時間を設定する事ができます。第4週では1日8時間、1週間40時間の法定労働時間を越していますがその分第1週の労働時間が減っているため、1ヶ月を平均して1週間40時間の労働時間となっています。
このようにあらかじめ所定労働時間を設定し従業員に周知しておくことにより、第4週のように法定労働時間を越しても時間外労働による割増賃金が不要になります。閑散期と繁忙期で調整が出来るという事ですね。
デメリット
導入時の手続き
冒頭で変形労働時間制は3タイプあると説明しましたが、いずれも労使協定等の書面を作成し所管労働基準監督署に届け出なければいけません。
実際の運用の際の残業代計算の煩雑さ
変形労働時間制では予め始業時間、終業時間を明記した上での労働時間を定めますが実際の労働時間がこの時間を超過してしまう事があります。超過した労働時間はその1日、1週間、1ヶ月の合計労働時間が法定労働時間の制限内か確認し残業代を計算しなければなりません。こちらのリンクには具体的な計算方法も記載されていますので参照してください。
参考URL:リーフレット 1ヶ月単位の変形労単位働時間制(pdfファイル)
必要な手続き
労使協定または就業規則の策定
今まで解説してきたように変形労働時間制を採用する場合は労使協定または就業規則を書面で作成し労働基準監督署に届け出なければなりません。作成する際は以下5つの事項を具体的に定めおく必要があります。
- 変形労働時間制を採用する旨の定め
- 対象となる労働者の範囲
- 対象となる特定期間とその起算日
- 労働日、及び労働日ごとの始業終業時刻と合計労働時間
- 有効期間(労使協定の場合)
なお4で定めた労働時間が所定労働時間となり3で定めた特定期間内において平均して1週間の労働時間が40時間となるように設定しましょう。この所定労働時間をどのように設定するかが時間外労働による割増賃金の削減につなげるポイントです。
上記取り決めの届出
このようにして書面にて作成した労使協定または就業規則を所管労働基準監督署に届出ましょう。よって企業控と労働基準監督署での保存用で2部必要になります。ただし従業員数が9人以下の事業所は届出が不要となります。
実際の運用の注意点
労働時間の振替について
労使協定または就業規則で定めた労働時間(所定労働時間)以外の労働時間には変形労働時間制は採用されません。よって臨時に労働時間を変更、振替を行って所定外労働時間が発生した場合は法定時間外労働になるか検討しましょう。
出典:リーフレット 1ヶ月単位の変形労単位働時間制(pdfファイル)
変形労働時間制と裁量労働制(労働時間の例外) | 大阪労働局
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