
有期契約労働者の無期転換ルールとキャリアアップ助成金
2022-03-05
平成25年4月1日の改正労働契約法の施行以来、無期転換申込権を持った有期契約労働者は増加していると考えられます。今回はこの無期転換ルールとその際活用を検討すべきキャリアアップ助成金について整理します。
無期転換ルールとは
同一の使用者との有期労働契約が1回以上更新され通算5年を超えた場合に、労働契約期間中の労働者の申し込みにより期間の定めの無い労働契約に転換したとみなされるルールです。これにより労働者が権利を行使すると使用者は拒否できないことになっています。
通算期間の計算方法とクーリング
上図の出典:無期労働契約への転換(第18条)-1(厚生労働省pdf)
無期転換ルールが適用される労働者の有期労働契約期間のカウントは平成25年4月1日以降に締結した有期労働契約の始期からです。上図のように通算契約期間が5年を超える契約期間から労働者は申込権を獲得します。労働者が権利を行使せずに有期雇用契約を引き続き更新した場合も権利は消失しません。
上図の出典:通算契約期間の計算について(クーリングとは) (厚生労働省pdf)
ただし有期労働契約が連続して行われておらず空白期間が存在する場合、その空白期間の長さ次第ではそれ以前の有期労働契約期間は通算契約期間として含めないこととなっています。この制度をクーリングと呼びます。
労働条件の明示と手続きについて
無期転換ルールにより無期労働契約に切り替わる際、労働条件の明示をしなくてはなりません。無期転換ルールは労働契約の期間の定めについて変更するものですので、その他の労働条件を変更しない限り有期労働契約と同一(契約期間を除く)となります。有期労働契約の無期転換、その際の労働条件の明示は口頭でも可能です。しかし紛争防止の観点や下記助成金申請の為にも労働条件通知書の交付や就業規則の整備をおすすめいたします。
無期転換の際に検討すべきキャリアアップ助成金正社員化コース
キャリアアップ助成金正社員化コースとは
「キャリアアップ助成金」とは有期雇用労働者を含む非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップを促進するために正社員化、処遇改善の取り組みを実施した事業主に対して助成する制度です。本記事作成時点で本助成金には7つコースが存在するしますが、正社員化コースとは就業規則または労働協約その他これに準ずるものに規定した制度に基づき、 有期雇用労働者等を正規雇用労働者等に転換または直接雇用した場合に 助成されるものです。厚生労働省の「キャリアアップ助成金パンフレット」もご参考ください。
助成額と上限
上図の出典:「キャリアアップ助成金のご案内(令和3年4月1日版)」(厚生労働省pdf)
上図のように無期雇用転換よりも正規雇用労働者に転換した場合の方が助成額が大きいです。また②の有期→無期雇用への転換の助成は令和4年3月いっぱいで廃止されることが予告されています。
「キャリアアップ助成金が変わります~令和4年4月1日以降変更点の概要~」(厚生労働省HP・pdf)
申請までの大まかな流れ
- キャリアアップ計画書を策定し管轄労働局に提出、認定を受ける。なおキャリアアップ計画として講じる措置の実施前日には認定されるべきです。
- 就業規則、労働協約又はこれに準ずるものに正社員等の転換制度を規定し、管轄労働基準監督署に提出。
- 規定した転換制度を基に正社員等に転換。転換した労働者に雇用条件通知書を交付します。
- 転換後6ヶ月正社員等に転換した労働者の雇用を継続する。転換前と比較して3% 以上賃金(基本給及び定額で支給されている諸手当)が 増額している必要があります。
- 転換後6ヶ月分の給与を支払ってから2ヶ月以内に助成金支給申請をします。
- 支給決定通知書が交付され、助成金が指定した口座に振り込まれます。
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