賃金は雇用の要 計算を間違えると労使間の信頼関係は崩壊

しっかり賃金を支払えば、しっかり労働する事を要求できます。
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従業員さんは、生活のために労働を行い賃金を得ています。
中には、仕事が趣味の延長だったり、レジャー資金調達のために働く人もおられますが、圧倒的に少数派だと思います。
つまり従業員さんにとって賃金は重大で最大の関心事項なのです。

だからでしょうか?
賃金に無関心だったり、誤ったご理解をされている経営者さんの事業所に伺うと、何故か同じ空気が流れています。
そして。

① 雇ってもすぐに辞める(離職率が高い)
② 人が育たない
③ 期待できる従業員がいない

などの事を社長が吐露されたりします。

もちろん、離職者が多いのも人材の育成が困難なのも賃金だけの問題ではありません。

ただ、会社が賃金に無頓着だったり労働法に違反していると、必ず業員さんのモチベーションは低くなり、離職は増加、
あげく募集しても応募も無いなどの現象がおこっている様に思います。

中でも多い問題パターンである2点をご紹介します。

(1)月給制で残業代を基本給に含めているが、きちんと計算すると本来支払うべき金額を満たしていない。
(2)残業などの割増賃金の計算方法を間違えている。


たとえば(1)は「25時間分の残業代を含み毎月定額(総額)で210,000円支払っている」とした事業所を一例として
ご紹介します。(所定労働時間が法定労働時間と同じ1日8時間、1週間40時間以内として計算)

大阪の最低賃金は2023年10月以降(時点)で1,064円/時間です。
ですから、残業などを行った場合の割増賃金はこの1.25倍で、時間当たり1,330円となります。
つまり、25時間の残業をすれば、残業代だけで33,250円(1,330円×25時間)支払う義務があります。

賃金総額が210,000円の場合で残業代が33,250円なら、残りの176,750円が基本給(固定給)となるわけですね。

この176,750円を1ヶ月の労働日数で割れば1日あたりの賃金が計算できます。
製造業などに多く見られる「土曜、日曜は完全に休日だが祝祭日は勤務」の場合を例とすれば、1ヶ月が28日ある月は概ね20日が労働日数、30日の月は21日、31日の月であれば22日です。

仮に21日で計算すると、1ヶ月の労働時間は8時間×21日=168時間となります。
つまり、基本給が176,750円/月で168時間勤務となると、、、176,750円÷168時間≒1,053円となり、最低賃金の1,064円を下回っている事になります。

ネットで簡単に自身の給与の適正が検証出来る昨今、これに従業員さんが気付けば、モチベーションもテンションも必ず下ります。

次に(2)のケース。
これは誤った情報をそのまま信じて賃金計算をされている場合です。
一番多いのは、割増賃金計算方法を誤って理解されているパターンです。

たとえば残業代などの割増賃金の計算は「(基本給÷1ヶ月の所定労働時間)×1.25=残業の時間単価」ですから「ベースとなる基本給を安くすれば割増賃金単価を抑える事が出来る」とお考えになるわけです。
(上記は法定時間外労働や法定外休日労働で月の累計が60時間以内の場合です)

場合によって、基本給を安くすれば最低賃金以下となってしまうため、役職手当や業務手当など毎月支払う固定額の手当で調整している場合も良く見かけます。(この考え方を、なぜか税務のプロが指南している場合が有りますので要注意です)
これは、残業など、割増賃金が発生しない事業所であれば、ほぼ問題は無いのですが、残業や休日出勤のある会社では高確率で問題となります。

なぜなら計算方法の正解は「(固定給÷1ヶ月の所定労働時間)×1.25=残業の時間単価」だからです。
そうです、分母は「基本給」ではなく「固定給」なのです。 

この「固定給」には、基本給はもちをん、毎月定額で支払う手当(※1)も含まれます。
つまり、基本給を安くして、その基本給だけで時間給を計算し、割増分を上乗せするのは反則(法令違反)なのです。

もし、残業の多い会社で、自分の割増賃金の計算が誤っていたと従業員さんが知れば、まずは黙って転職を考えるでしょう。
中には直接差額を請求する場合や労基署に相談される人がいてもおかしくありません。

(1)(2)のいずれも是正すると確実に人件費は増額となります。 ただ、法令違反は無くなり必ず労使関係は良くなります。

交通違反をしても知らなかったと言い訳すれば許され、、、ませんね。
労働法も同じです。
違反をすれば、道路交通法違反と同じく、あるいはそれ以上の罰則が課される事を知っておいてください。

(※1)毎月定額で支払う手当
 固定残業手当(※2)や通勤のための交通費は含まれません。

(※2)固定残業手当
 毎月定額で支払う残業代金。
 定額に見合った残業時間数を明確化する必要があり、超過が発生すれば別払いが必要。
 また、設定している残業時間数以内の残業であっても、取り決めた定額は支払う義務があり。

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