「育成就労」で何が変わる?技能実習との違いを整理しました
これまで技能実習制度が2027年4月に廃止、「育成就労」制度へ、技能実習「認定取消し」累計754社にという記事をお届けしてきました。製造業・建設業を中心に、外国人材無くして経営が成り立たない会社は多い一方、「制度の中身が具体的にどう変わるのか」を正確に把握できている経営者はまだ少ないのが実情です。今回は、現時点で分かっている情報を整理してお伝えします。
「監理団体」が「監理支援機関」に変わります
これまで技能実習生の受け入れを仲介してきた「監理団体」は、新制度では「監理支援機関」という名称に変わります。重要なのは、今の監理団体の許可は自動的には引き継がれないという点です。監理支援機関として活動するには、新たに許可を取り直す必要があります。
また、外部監査人の設置が完全義務化されるなど、監理支援機関に求められる要件は今までより厳格化されます。外部監査人には、弁護士・社労士・行政書士などの有資格者で、受け入れ企業や監理支援機関と利害関係のない人物があてられます。
この厳格化にともない懸念されるのが、許可を取り直せなかった(あるいは取らなかった)旧監理団体が、実質的に他の監理支援機関への「ブローカー」のような立場になってしまうケースです。この場合、何かトラブルが起きた時の責任の所在があいまいになりかねません。今お付き合いのある監理団体が、新制度でどういう立場になるのか、早めに確認しておくことをおすすめします。
在留期間は、技能実習より短くなります
外国人材を雇用するうえで会社が重視するのは、主に(1)在留期間(2)言葉(3)文化の理解、の3点かと思います。まず在留期間について整理します。
育成就労そのものの在留期間は、原則3年です。技能検定の不合格など正当な理由があれば、最大1年延長できます(最大4年)。技能実習(現行)が1号〜3号を合わせて最長5年だったことと比べると、単体では短くなります。
ただし、育成就労は「そこで終わり」の制度ではなく、その後の在留資格へつながる設計になっています。全体の流れは次の通りです。
ステップ0:育成就労
在留期間:原則3年(最大4年)
家族帯同:不可
転籍(転職):一定要件のもと本人の意向で可能
ステップ1:特定技能1号
在留期間:通算5年(※1)が上限
家族帯同:基本的に不可
転籍(転職):同一の業務分野内であれば自由
ステップ2:特定技能2号
在留期間:上限なし(実質的に長期在留可)
家族帯同:要件を満たせば配偶者・子も可能
転籍(転職):同一の業務分野内であれば自由(※2)
(※1)通算5年に育成就労の期間は含まれない、つまり別枠という見方が有力です。その場合、育成就労(最大4年)+特定技能1号(5年)で、合計9年近く働き続けられる計算になります。ただし本記事執筆時点では出入国在留管理庁による公式な確認は取れておらず、今後の公表を待つ必要があります。
(※2)特定技能2号の転籍について、本記事執筆時点で出入国在留管理庁の明確な記載までは確認できていません。特定技能1号と同様の扱いになると見られますが、確定情報ではない点にご留意ください。
つまり「最初の受け皿(育成就労)は技能実習より短くなった代わりに、その後は特定技能1号・2号へとステップアップし、長く働き続けられる道が用意された」というのが制度全体の変化です。初めて受け入れる段階の在留期間だけを見て判断せず、その先のキャリアパスまで含めて考える必要があります。
転籍(転職)が可能になります
技能実習では、倒産などやむを得ない場合を除き、本人の意向による転籍は原則認められていませんでした。育成就労では、一定の要件を満たせば、本人の意向による転籍が可能になります。
要件としては、同一の受け入れ先で一定期間(分野によって1年または2年)働いていること、技能検定の基礎級(相当試験)に合格していること、所定の日本語試験に合格していることなどが検討されています。暴行・ハラスメントや重大な法令違反があった場合は、この期間を待たずに転籍が認められる例外もあります。
「今まで通り、長く働いてもらえる」という前提が崩れる可能性がある、という点は、特に人手が足りない会社ほど心構えが必要です。
日本語要件が新設されます
技能実習では、介護職種を除いて日本語の試験要件は原則ありませんでした。育成就労では、就労開始前に日本語能力試験でA1相当(日本語能力試験のN5相当、ごく基礎的なレベル)に合格するか、100時間以上の日本語講習を修了することが求められます。
ここで注意したいのは、「試験に合格できなくても、講習さえ受ければ要件を満たせてしまう」という設計になっている点です。実質的なハードルはそれほど高くない、ということは理解しておいた方がよいでしょう。

対象分野は「特定技能」とほぼ同じになります
育成就労の対象分野は、特定技能の対象分野と原則一致させる方針です。特定技能の対象分野から、国内での育成になじまない「航空」「自動車運送業」を除いた、次の17分野が目安とされています。
介護、ビルクリーニング、工業製品製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業、鉄道、林業、木材産業、リネンサプライ、物流倉庫、資源循環(以上17分野)
※2026年9月時点では、このうち「航空」分野(空港グランドハンドリング業務)を追加して18分野とする案も政府の有識者会議に示されています。正式には2026年12月の閣議決定で確定する見込みです。技能実習独自の職種区分とは異なるため、今受け入れている職種が引き続き対象になるか、確認が必要です。
制度が大きく変わる節目ですので、「今の監理団体はどうなるのか」「うちの業種・職種は対象分野に入っているか」「転籍のリスクにどう備えるか」など、不安な点があれば早めにご相談ください。
