今回は、ホントにあった ぞっとする恐いお話です
「雇用契約書」「労働条件通知書」に関係する労使トラブルのお話です。
このお話は今年(2023年)の夏のコトです。
当方のお客様で、美容室を複数店経営されている事業主Aさんから以下のご相談がありました。
『9月1日から本採用の予定をしていた男性が、1日も出社しないので採用を取り消しいしたところ、労基署から
不当解雇とされ、解雇予告手当を支払えとの勧告が来た。これに従う義務はありますか?』
とりあえず、当方の専任の社労士と一緒に私は事業主Aさんから詳しくお話をうかがう事になりました。
お話によりますと、、、。
8月25日、事業主Aさんは職場見学に来た男性に「新店舗が9月1日からオープンします。経験も豊富な様だから即戦力として、そこで働いてみませんか? ただし、フルタイムの勤務ですよ」とスカウトを行いました。
この誘いに男性もその場で了解。
和やかに、そしてスピーディーに新しく店長となる人の下で、そして新店舗でこの男性が勤務する事となりました。
口頭での合意でも、これは法的に有効です。
同時に、事業主Aさんは「新店舗はオープンまで1週間ほどの間があり、まさに出店準備中なので、出来るのならオープン前の準備を手伝ってもらえないだろうか? 日額○○円の支払いをするから」と伝えました。これについても男性は承諾。
この時、男性は雇用契約の締結か労働条件通知書の交付を事業主Aさんに依頼しました。
ただ、事業主Aさも月末で多忙だった事もあり「オープン日に、労働条件通知書を新店長に託しておきます」と返事をしました。つまり、正式雇用となる9月1日に労働条件通知書を渡せば良いと考えていました。
新店舗はなかなかのスタート だったハズですが
翌日の8月26日から27、28日と男性は開店前の新しい店舗に出勤して準備を行いました。
この際も男性は、労働条件通知書の交付を新店長に「大丈夫ですかねぇ」と問うています。
新店長からすれば、”正式雇用が反故されないか、よほど心配なのかな” と思い「大丈夫だよ」と返事をしていました。
新店舗の準備は思ったよりも順調で28日中に完了しました。あとは開店を待つのみの状態です。
そこで事業主Aさんは「29日と30日、31日のどの日か、別の店のヘルプをお願できないかな?」と男性に尋ねます。
すると男性は「私は新店舗の要員として採用されていますから、別の店舗には行きたくありません」と断って来ました。
事業主Aさんは、折角だからこの機会に他店舗の従業員との交流もあれば良いのではと考えていましたが、本人の意向を
尊重し「では、9月1日からよろしく」との事になりました。
この時にも男性は再び「労働条件通知書に記載される勤務場所は新店舗とするように」と念をおして要請していました。
近くに居た新店長は”本当に心配性だな”と思ったと証言しています。
そして9月1日。 新店舗は予定通りオープン。
ところが、男性は欠勤となりました。
理由は、開店時刻の直前、男性から母親が突然倒れたとの電話連絡があり、やむなくの欠勤です。
突然の出来事でしたが、事態が事態だけに、新店長は「お大事に」と伝え、電話を切りました。
そして翌日。
この朝も電話で母親の状況が芳しくないとして欠勤となりました。
そしてその翌日。
新店長は”今日は来るかな?”と思っていましたが、開店時間を過ぎても男性は出勤しませんし電話もありません。
仕方なく店舗の電話を使って男性に連絡をしました。
しかし、男性は電話に応答しませんでした。
”お母さんの状況が悪化して入院でもしたのだろうか?” 新店長は心配だったと言います。
ただ、お昼前になっても連絡が無いため、新店長は休憩時間に自身の携帯から男性に電話をしてみました。
すると男性が応答。
「大丈夫?」とたずねると、今日は自身が風邪をひいてしまったので休ませて欲しいとの返事。
新店長は、少々不審ではあったものの”仕方ない”として欠勤を承諾しました。
その翌日、つまりオープンから4日目。
昔も今も、急に音信不通になる人 いますね
昨日同様、男性は出勤せず、電話もありませんでした。
店舗電話や自身の携帯を使って男性に複数回電話をしてみますが、男性はまったく応答しませんでした。
以上の状況は、日々の営業状況を含め、新店長は事業主Aさんに報告をしています。
この日の報告の際、事業主Aさんは「明日、事前連絡が無ければ今度は私が自分の携帯から連絡する。連絡がなければ教えて欲しい」と新店長に伝え、翌日の様子を見る事にしました。
翌日、やはり出勤も音信もありません。
事業主Aさんは朝から報告を受けて、男性に電話をする事にしました。
おそらく、着信履歴の無い番号からの着信だったからでしょう、事業主Aさんの電話に男性は応答しました。
そこで事業主Aさんは、親や本人の病気は仕方が無いが、欠勤するのなら連絡すべきだし、その時に応答が無理であれば、折り返し会社に連絡するのが常識ではないかと問い質しました。
ところが男性からは、きちんとした説明も弁解も謝罪もありませんでした。
ただただ、問いかけに対して「はい・・・」「はい・・・」と小さな声で答えるだけ。最終的には黙り込んでしまう始末です。
事業主Aさんは ”これ以上電話で話しても無駄だ”と判断し「もう来なくてもいいよ」と雇用の打ち切りを宣告しました。
雇用の打ち切りと言っても、正式な雇用関係書面の取り交わしも交付は行っていません。
なにしろ男性は、本採用日から1日も出勤していないのですから。
もちろん、採用後に必要となる雇用保険や社会保険の手続きも行っていない状態です。
普通に考えれば”雇用の打ち切り”と言う言葉は正しくない感じがします。
この電話で事実上の労使関係は終了となり、事業主Aさんは ”もう職場には来ない事を確認した” との意識でした。
しかし、その3日後。
労基署から不当解雇につき160,000円を超える金額の解雇予告手当を男性に支払えと勧告が来たのです。
さて、会社は、事業主Aさんは、新店長は何がいけなかったのでしょう?
長くなりましたので、今回はここまで。 続きは次回に持ち越しです。